石塚沙矢香:かけらはただよひ |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 9月 21日 |
2009年妻有アートトリエンナーレで、古民家の暗い天井裏から床まで、部屋中に米粒のついた糸を張り巡らし、その家で使われていた茶碗や、急須、お盆や農作業道具が中空に舞う、不思議なインスタレーションが記憶に新しい石塚沙矢香の新作を発表します。 石塚はかつてその場所が辿って来たストーリーや残された道具にインスパイアされて、インスタレーションを行います。 2008年代官山では都市の一角の鎮守の森に、赤い紐に割れた鏡などを多数結びつけた作品を展示し、場の神秘性を際立たせました。また2007年大阪カレイドスコープでは、かつて繊維産業で繁栄した近代ビルの一室に、布片の山に天井から無数の布片が降っている光景をつくり出しました。 第二次世界大戦で唯一残った商家では、残されていた道具を横一列の高さに糸で結び合わせ、まるで過去を知っているモノたちが昔話を語らっているような迫力ある作品を発表しています。 石塚は油絵から始まり、画面から飛び出すように糸を垂らしているうちに、2005年頃より空間全体にインスタレーションを行う現在の作品を制作するようになりました。 今回INAXギャラリーでは、陶器のカケラを繋ぎ合わせたインスタレーションを行います。これはこれまでのような場のストーリーを使わない新しい試みの作品です。 陶製の食器は、ぶつけたり落としたりすれば壊れます。壊れやすいのは人間関係も同じで、仲が良くても、恋人同士でも関係が壊れることがあります。陶器の壊れたものは元には戻らないけれど、カケラを繋ぎ合わせ、会場いっぱいにカケラの海をつくることによって、また違う形が生まれてくる、努力して繋ぎ合わせることの意味を問う作品となる予定です。 この場所から違う場所へ、過去から未来へ続くように、地から天へと上る糸に結び付けられた無数の陶のカケラが、水面の輝きのように会場を覆います。誰もが知っている身近な道具を使いながら、端正で緊迫感あふれるスケールの大きな作品をぜひ会場でご覧下さい。 石塚沙矢香 個展・グループ展 ※全文提供: INAXギャラリー 会期: 2010年10月9日(土)-2010年10月28日(木) |
最終更新 2010年 10月 09日 |
是非、会場で、観るというより体感すべき展示。
展示空間一杯に、透明の、不定形のプレートが天井から無数に吊るされている。プレート上に載っているのは、割れた陶器。会場を進むと、プレートがゆらゆらと揺れていく。 透明のプレートは、割れた器から流れ出た汁のようにも、器が割れたことで今まで見えていなかった結界のようなものが見えたようにも、確かめるのも怖い位に、ただふらふらしている、あやふやな地面のようにも見える。
誰もが、いつか割ってしまったものがあっただろう。その体験を思いおこさせ、様々な思考を沸き立たせてくれる。今までは歴史を持った場所の空気を生かしてきた作者が、場の力から独立してホワイトキューブで、普遍的なものをつかんだように思える。