小林史子:Mistletoe |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 9月 16日 |
小林史子は既にその場所にあるモノに自分自身の持ち物などを足して組み直し、空間全体に構築するインスタレーションを制作します。 2006年に大学院修了後、国内はもとよりヨーロッパやアジアにおいて展示やワークショップを行い、評価を受けています。 家具や自転車から、解体された家一軒に至るまで、時に空中に高く積み上げられ、壁一面に押し込められ、異なるサイズの空間へと移されたさまはアクロバティックで、大胆さと繊細さ、高い構築力と構成力で見る者に迫ってきます。 日常という不文律の中で一定の役割を与えられ、意識や場所に固定されたモノを解き放ち、組み変えることで現れる全く違った世界―さまざまな場所と自分との関係性が生まれる瞬間です。 小林によって生み出される関係性からは、全ては変化し進み続ける旅の途中であり、「今」とはあらゆる可能性のうちの一つに過ぎないと気づかされます。 今年震災前に行われた水戸芸術館での作品「Node Point」では、水戸市内の放置自転車52台を解体し、ホイールやサドルが繋がり合って空中へ舞うスペーシーなオブジェを制作しました。この結節点という意味のタイトルは、全体よりも結合部分にこそ何かがあり、それが全体へどう影響しているのか、日々の営みのうちに起こる小さな事件が積み重なって大きくなるように、過去の経験を集積して次の行動へと移す自分のリアリティを、繫がりというキーワードで見せました。 今展では直前に滞在したドイツでの制作を踏まえ、Mistletoe(宿り木)と題した展示を行う予定です。どうぞ会場でご覧ください。 小林史子 主な個展 主なグループ展 全文提供: INAXギャラリー 会期: 2011年10月6日(木)~2011年10月24日(月) |
最終更新 2011年 10月 06日 |
確かなものが、いかにあやふやであったか、私たちは3月の震災で思い知らされた。今回の小林の展示では、確かであるはずのギャラリー空間が、崩されている。天井の格子は、落ちてくるように吊るされ、架空の柱や紙に印刷された壁の中身の写真が組み合わさる。ギャラリーという建築物自体が、小林のインスタレーションにより、崩壊を模しているのだ。しかし、その様子を見ながらも、脳内には整然としていた時のギャラリーが思い起こされ、確かなギャラリー空間が再構築されていく。
同時上映の映像作品では、留学時代に作者が住んでいた部屋で、荷物を作者が積み上げていき、また並べ直すという作業がエンドレスで流される。物の位置を変えるという行動は、物そのものの存在と、位置関係とを、体を使って愚直なまでに確認していく作業でもある。私たちは、確かめながら再構築していく、想像という力を持っている。その力を思い知らされる展示である。震災後の今だからこそ、観えてくるものがある作品だろう。