青山悟:芸術家は人生において6本の薔薇を真剣につくらねばならない |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2011年 4月 29日 |
急進的か保守的か、政治か美術か?作家人生において最後の薔薇ミシン刺繍によって表現される6本の赤い薔薇。 多くの象徴性を持ち、美しく、同時に陳腐である薔薇のイメージに対し、いま敢えて真っ向から取り組むこと。それが、「労働」という概念や、政治と美術、手工業と機械工業、イマジネーションとアプロプリエーションなどの二項対立等に対する問題意識を反映した作品群、「Glitter Pieces」(2008〜)を経たうえで作家が選択した新たな方向性です。 青山は自ら「薔薇をつくることを自分の作家活動において二度としない」と宣言することによって、アートが本来持つロマンティックさとその強度を呼び起こさせる一方で、「作品か、作家か」という価値や評価軸に対する疑問を私たちに投げかけます。はたして作家最後の薔薇たちは有効性を持って現代に咲くのでしょうか。 この機会に是非ご高覧くださいますようお願い申し上げます。 青山悟 プロフィール ※全文提供: ミヅマアートギャラリー 会期: 2011年6月8日(水)-2011年7月9日(土) |
最終更新 2011年 6月 08日 |
会場に並ぶのは、6点の作品。額縁に入った展示物は、一見、絵画のように見える。しかし、じっくり観ると、それが細かい刺繍で出来ていると気付く。ミシン刺繍である。黒地のポリエステル布に縫われているのは、真紅の薔薇だ。最後の一点のみ、暗闇の別室での観賞となる。糸のディテールも観賞し辛い環境だが、縫いこまれたキラキラと光るメタリック糸が映える演出だ。薔薇という、エロスや美しさ等の様々な意味を持つ花と、キッチュな「薔薇のミシン刺繍」という存在と、場末の飲み屋の中での光を孕んだ存在とが、多様な薔薇像を鑑賞者に導く。
様々なコンセプトが入り込み、作品の全体像を読み込むのが少々難しいが、まず眼の前の精緻な刺繍を観ることで鑑賞者の思考を促す展覧会だろう。