大橋文男:しっぽをだいてねむるように まぶたをだいてねむる |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2011年 4月 08日 |
やわらかな光がさしこむ森の奥、緑の草の上で白いちいさな紙人形が輪になって踊っています。広がったスカートの女の子、帽子にズボンの男の子たちが、風が吹くたび、ひらりと舞い、くるりと回り、静かな演舞は軽やかにそっと続けられ、白と緑の色が揺れてまぶたの裏にいつまでも残るようです。白い切り紙のひとがたに糸を通して木に繋ぎ、風に任せるというシンプルな手法ながら、引き込まれて見続けてしまう映像作品です。 身のまわりのひそかな囁きと気配を交わしながら引き寄せ、物語を与えていく大橋文男の作品は、どこかで手を離して偶然性にゆだねる軽やかさと透明感、そして綺麗で少し静かな怖さが漂っています。私たちはそっと息をひそめてその世界に身を浸すのです。 東京藝大の卒展では「森と歩く人」で教室全体を使った映像インスタレーションを行いました。窓辺のベッドに横たわる老女がぽつりぽつりと囁く言葉とともにカーテンが翻り、白い切り紙の人形が風に舞う落ち葉のようにくるくると踊る映像と、教室の机ひとつずつに点されたライトの下に置かれた紙人形。暗い教室に浮かぶその二つが繫がり、どこかへ攫われてしまう感覚を覚える作品です。 大橋文男は、一度社会人となってから大学受験し、美大に在籍しながら作品をつくり始めました。若い同級生たちと表面的な年齢を取り払った関わりが生まれていった中には、経験からくる言葉を投げずに見守るという作品づくりにも共通した姿勢があります。 今展では、新作の映像と立体を含めたインスタレーションを行う予定です。光の粒子に包まれる映像と、小さな声が秘密を囁くような静かな気配をぜひ会場で体験してください。 大橋文男(おおはし・ふみお) 受賞歴 展覧会歴 パブリックコレクション 東京芸術大学美術館 ※全文提供: INAXギャラリー 会期: 2011年5月2日(月)-2011年5月28日(土) |
最終更新 2011年 4月 13日 |