下平千夏:implosion point |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 11月 12日 |
空間いっぱいにぎゅんと広がっていく線、線、線。エネルギーの塊が空中のある一点で爆発し、放射状に膨張していく力を、可視化したかのような線が、部屋に満ちています。 その、圧倒的な空間と、凝縮し放たれたラインの美しさへの驚きが、いったん収まったあと、次の驚きに打たれます。素材は輪ゴム。私たちが身近に使っている輪ゴムが空間を構成する分子となり、何千何万と繋ぎあわされてつくられているのです。壁、床、柱の端から端へ、一点で捻り込んで固定された輪ゴムの線は微妙な凹凸を持ち、空気にモアレのような震えを出現させます。伸びた輪ゴムが跳ね返る痛みのような感覚が呼び起こされ、素材もかたちも非常にシンプルながら、いくつもの変異点が重層的に場を構成し、見ているものをその空間の内に巻き込んでいくようです。 下平千夏は大学で建築を学んでいましたが、模型ではなく、空間を1/1 のスケールでつくる面白さと出会い、美術作品をつくりはじめました。卒業時には、鏡面をテーマにした「鏡みる」を制作し、東京藝術大学大学院の先端芸術表現科に進んでからは、妻有アートトリエンナーレをはじめ多くの場所で作品を発表しています。下平の作品では、ある始点があってそこから膨張していくかたちがよく見られます。目では見えないけれど、私たちの思考や感覚は当たり前のように移り変わり、その変異点は連続の中に曖昧に埋もれていきます。空間自体の中にも存在する、その連続する変換の瞬間、世界に満ちるとめどないエネルギーを捉えようとするかのようなかたちです。輪ゴムや鈴、ボンド、木といった多くの人にとって身近に感じる素材を選ぶのは、共感が見えざる点へのリンクとなるからだといいます。今展では、会場全体に輪ゴムを使った作品を展示する予定です。ぜひ会場でご覧ください。 下平千夏プロフィール(SHIMODAIRA Chinatsu) 展覧会歴 ※全文提供: INAXギャラリー 会期: 2010年12月4日(土)-2010年12月25日(土) |
最終更新 2010年 12月 04日 |