高橋治希:磁器の蔓草 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 10月 13日 |
会場いっぱいに広がる植物の蔓。天地左右にダイナミックに巻き広がる様は、大きな生命力とエネルギーを感じさせます。 この植物はすべて白い磁器で出来ています。蔓には花もついていますが、固く焼き締まった磁器の質感が、花びらやつぼみの1枚1枚に凛とした表情を与えています。壊れそうに儚く、同時に見る者を絡めとるような強さが混在する作品です。 高橋治希(Takahashi Haruki)さんは芸大在学中の1999年からキリン・コンテンポラリー・アート・アワードなどを受賞しましたが、大学院修了後2003年には制作拠点を出身地の金沢に移し、それまでの映像作品から大きく変わる、九谷焼を用いたインスタレーションを制作するようになります。 2005年に金沢21世紀美術館にて発表、今年2009年「越後妻有アートトリエンナーレ」では、民家一軒にあふれんばかりの磁器の花「蔓蔓」を展示し、その迫力、美しさが感動を呼びました。そのテーマは当初の「風景の感じ方」から、「人との関わりの中で風景の概念を広げる」へと変化してきています。 白磁の花びらには、青、赤、緑、黄色と九谷焼の釉薬が散り、全体に明るいアクセントを与えています。例えば越後妻有の作品では、これは住民に好きな風景を聞き取り調査して、描いたものです。また、こうした白い風景だけでなく、2008年「金沢アートプラットフォーム」では、廃屋の民家の闇の中に「ウシミツ」を制作。暗い土間に入った途端、足元にびっしりと蔓延る真っ黒な雑草群に驚かされますが、これはアスファルトでつくられた精密なはらっぱです。「都市の基材ともいえるアスファルトの物質性の中に、新たな虚像空間をつくり、都市の中に別次元の風景をつくりだそうとした」作品です。 今展では、新作『蔓蔓 Tokyo vine 』がギャラリーのホワイトキューブいっぱいに広がります。この作品は植物の形をしていますが、イメージは河。地方で感じる「波のように押し寄せる東京のイメージ」、「東京化していく全国の街並みが、花や葉に溶け込み、流転していく」さまが、「磁器の儚さと共鳴した新たな風景をつくりだす」作品となります。 作家略歴 個展: 全文提供: INAXギャラリー |
最終更新 2009年 11月 02日 |