卓越した木版技法と味わい深い詩が入った木版画で著名な京都在住の作家、山田喜代春さん。 23歳の時に画家になろうと決めヨーロッパに渡り絵を学び、このころから詩も書き始めました。 うわべや流行りを追いかけるだけの絵ではなく、自分の目と手で自分にしか描けないほんものの絵を描きたい。 詩と絵を一枚の紙に同居させたい。試行錯誤して木版画にたどり着き40年間、人生や何気ない日常から 大事なことをさりげなく掬いとってくれる独自の木版画を制作し多く人の心をとらえててきました。 山田さんが作家活動の初期より始めた木版画の頒布会「板切れ月報」は現在30年目に入り、全国に多くの愛好家がいます。 長期継続の会員が多く、現在も限定枠の空席待ちが続いています。
元立命館大学教授で「上方芸能」誌 発行人 の 木津川計さんが、この6月8日NHKラジオ第一放送で、 想像力、発見力の視点から山田さんの詩の魅力をこのように話されています。 詩というもの、総じて文学は、想像力と発見力と表現力、この三つを必要とします。 しかし文学の根幹は発見力にこそある。日常の平凡を描いても山田さんの発見の眼は輝いています。 『星がチカチカひかるのは子どもがなでているから』 なるほどなぁ。純真な子どもの手でなでるから光るんやね。大人がなでたら濁ります。想像力の面白さであります。 『神さまに手紙を書いて虹にはさんでおきました 虹いろににじんで読めないと神さまから返事がきました』 虹に手紙をはさむという想像力が意表をつくんです。 『失敗の多い人やダメな人を許すことのできるおおきなこころをもとう まずてはじめにぼく自身を許そう』 ぼく自身を許そうという発見力の詩ですね。 『悔いのない人生なんかおもろないわ』 人生後悔する事ばっかりです。せやさかいにおもろいと言われたらなんかほっとしますね。 山田さんの発見力の秀逸にこんな詩があります。 『あなたの乳房に指で円を引きこの線よりだれもはいるな』 このとおりでしてね、誰も入るな、ぼくだけの乳房やないか、と、男はみんな思うてるんです。
木版作家としては多くの著書があり、なかでも1990年に出版され絶版となった「ぼくはコペルニクスだ。」は、 例年全国で開催している個展会場で復刻の希望が最も多く聞かれてきました。 2011年4月に出版された山田喜代春さんの「絵日記 万歩のおつかい」は、 新作83編を加えた待望の全124編の珠玉の詩画集です。 このたびは、山田喜代春さんの待望の新刊発行を記念して、建前ではない独白の詩とほろ苦い想いをユーモアでくるんだ原画と、 これまでの傑作木版画、新作の木版画とともに約50点展示します。 ひさしぶりの東京展をぜひご高覧ください。
山田喜代春 (やまだ きよはる)略歴 1948年 京都に生まれる 1971年 ヨーロッパ放浪 1980年 自作の詩を用いた木版詩画作品の頒布会「板切れ月報 」 を始める ( 現在も継続中 ) 1983年 木版画によるオリジナル詩画集「人物抄」出版/湯川書房 1984年 「ハガキ版画館」出版/書舎コイケ 1989年 季刊「銀花」八十号に五千枚の直筆詩画を制作 1990年 詩画日記「ぼくはコペルニクスだ。」出版/亀山社中 1991年 季刊「銀花」八十八号記念号に「八八あったらいいな」(全八点)を制作(木版画・一冊に一点添付)、木版画詩画集「けんけん」出版/アスカ 1993年 サクラアートミュージアムで個展(サクラクレパス協賛) 1994年 季刊「銀花」一〇〇号記念号に木版画五千枚制作、木版画によるオリジナル限定本「山田喜代春・蔵書票集」出版/私家版 1995年 KBS京都放送の番組審議会委員を委嘱される(期間三年) 1996年 立命館大学文学部に社会人学生として入学。京都新聞にエッセイ「ぼくは大学いちねんせい」を連載(週一回・一九九六年五月~一九九七年三月) 1997年 木版画詩画集「すきすきずきずき」出版/東方出版 、エッセイ集「ぼくは大学一年生」出版/東方出版、絵手紙交流本「人並みでたまるか」出版/清流出版 2000年 バルカウス市立美術館(フィンランド)で個展、京阪ギャラリー・オブ・アーツ・アンド・サイエンス (京阪百貨店守口店)180点の個展 2001年 アロンディガ・グラナディダス州立美術館(メキシコ)での「日本現代版画展」に出品 2002年 「銀花にかかわる5人の木版画集」出版/がらんどう出版 2006年 ギャラリーかもがわで通算百回目の記念個展、ワイアートギャラリーで「板切れ月報の四半世紀」記念個展 2008年 「自己肯定感って、なんやろう?」 山田喜代春・版画 高垣忠一郎・文 出版/かもがわ出版 2011年 南カレリア市立美術館(フィンランド)で個展
木津川 計(きづがわ・けい) 1935年生まれ 大阪市立大学文学部社会学科卒業 1968年、雑誌『上方芸能』を創刊 以来1999年3月まで編集長をつとめる 1986年4月 立命館大学産業社会学部教授 2006年3月 立命館大学を定年退職 民放連盟賞中央審査委員会審査委員長(2004、5年度エンターテインメント部門) 文化庁芸術祭賞選考委員、文化庁国際芸術交流支援事業審査委員会副主査、芸術選奨文部科学大臣賞選考委員会主査ほかを経て現在は雑誌『上方芸能』発行人、和歌山大学観光学部客員教授 現在の兼務 兵庫県川西市生涯学習短期大学学長 「一人語りの長谷川伸劇場」「木津川計の一人語り劇場」主宰 NHKラジオ「木津川計のラジオエッセイ」(レギュラー)ほか
【おもな著書】 『文化の街へ』(大月書店)『上方の笑い』(講談社現代新書)『含羞(がんしゅう)都市へ』(神戸新聞出版センター)『生活文化の視座』(日本生活協同組合連合会)『大阪の曲がり角』(東方出版)『可哀相なお父さんに捧げる哀歌』(法律文化社)『人間と文化』(岩波書店)『〈趣味〉の社会学』(日本経済新聞社)『生き甲斐のゆくえ』(かもがわ出版)『優しさとしての文化』(かもがわ出版)『上方芸能と文化』(NHKライブラリー)『都市格と文化』(自治体研究社)ほか
【受賞】 京都市芸術功労賞受賞京都新聞文化賞受賞 第46回菊池寛賞受賞(1998年12月)
※全文提供: ワイアートギャラリー
会期: 2011年7月6日(水)-2011年7月12日(火)9:00 - 21:00(最終日 - 17:00) 会場: 丸善・丸の内本店 4階ギャラリー A(東京都千代田区丸の内1-6-4 丸の内オアゾ4階)
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