竹中美幸:闇で捕えた光 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2013年 9月 05日 |
竹中美幸の出会いは2002年の「代官山猿楽祭」の前身の「代官山アートフェア」までさかのぼる。あるベテランのギャラリストが一押し作家として連れてきたのが竹中さんだった。水彩のドローイングとまだ当時始まったばかりの樹脂。今から考えればまだ手法も稚拙だったかも知れないが、方向性はそのころから一貫しており、その手法が熟達して10年後にはVOCA展に出展するようになった。この間、作品としてクオリティが高まるだけでなく、他にもアートフロントの展覧会では樹脂を立体化しようとしてみたり、ドローイングと樹脂を同一の画面で表現してみたり新たな表現を目指した試みも続けてきた。 ところが、2013年になって竹中は突如35mmフイルムをギャラリーに持ち込み、その試作品を私たちの前に並べ始めた。私たちもこの作家がフイルム現像の仕事を以していたことを思いだし、この10年来の試行錯誤の結果、ようやくアートして結実した作品を初めて目の当たりにした。それはフイルムに恣意的に光を露光することで色を与え、それを複数の層として重ねることで見えないはずの光、あるいは光によって初めて見えるようになるはずの何かをフイルムという物体を通して可視化する作品群である。 竹中美幸とはどんな作家だろうか。ドローイングでは目を強く閉じ、光の残像を応用して出てくる種子のような物体を描く事、樹脂のシリーズでは透明樹脂の光の陰影によって見えないものをそこに見えるようにすることであった。これまで2極化していた表現に第3の表現が加わることにより、この作家がこれまで種子だとか樹脂だとかというレベルでしか捉えていなかったことに気づかされた。むしろ視覚が像を結び、それが何であるかということを認識する以前の曖昧であり続ける像を表現しようとする作家なのかもしれない。 全文提供:アートフロントギャラリー 会期:2013年8月30日(金)~2013年9月15日(日) |
最終更新 2013年 8月 30日 |