利根川友理:ドッジボール──スローモーション若しくは中座 |
展覧会
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執筆: カロンズネット編集
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公開日: 2010年 11月 10日 |
「ドッジボール──スローモーション若しくは中座」 寄せ。返し、寄せ。返し、 波の間を球が行き交う。 やがて、 その波も散り散りになり、 球はだんだんに大きさを増していく。 そして、 遊びの終わり。
ドッジボールはそのルールからして、爽快なまでに単純明快な球技である。 このゲームでは、1.身をかわす(≒dodge)技術、2.ボールをキャッチする技術、3.狙いどおりにボールを投げる技術(そもそもの狙いが的外れでは論外)、この3つの技術をいかに発揮するかが生き残りにかかってくる。 小学生など低年齢では、体力の勝る者がこの3つとも兼ね備えている場合も多いが、いずれにしろ3の技術が無いことには勝ち様がない。 ドッジボールも数十年ご無沙汰していて、遠い過去の話になってしまうが、わたしは足が遅かったにもかかわらず、1の技術だけは備えた子供だった。 ただの怖がりだったのかもしれない。そういう子供では、たとえ運良く内野の最後のひとりになっても返す球がない。 わたしがひとり内野に残った時点でこちらのチームの負けはほぼ確定なのである。 わたしはこの「返す球がない」事態を数十年経っても忘れられないでいる。 それはずっとネガティブな事柄の象徴として記憶に残ってきたのだが、長い間それを心にかけ続けているうちに徐々に捉え方が変わってきている。 今は、「返す球がない事態」を、否定的に捉えるのでもなく、また一転して肯定するのでもなく、プラスマイナスの指標から離してもっと拡大して見つめてみたい気がしている。ドッジボールは、単純かつ複雑なゲーム。
遊びは続いていた。 波の水滴に戻る。 -Aug.2010 利根川友理
利根川友理 略歴 1964年生まれ。1987年東京理科大学卒業。1995年創形美術学校研究科版画課程修了。画廊、出版事務所、書店、美術館、ギャラリーバー等各所で個展を主に、微細な素材を用いた立体作品、版画作品等を要素にしたインスタレーションを展開。
※全文提供: 路地と人
会期: 2010年11月15日(月)-2010年11月28日(日)13:00~19:00|水曜休廊
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最終更新 2010年 11月 15日 |